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前回のブログで建設業許可を取得するための5つの要件についてご紹介しました。
この5つの資格要件のうち、経営業務管理責任者や専任技術者の経営経験や実務経験(取得したい建設業の許可業種に見合った資格を有しない場合)の証明方法の部分は、建設業許可取得にあたって、少しハードルの高い部分ですので、前回のブログでは、この2つの要件について説明するのが目いっぱいとなってしまいました。
皆さんには、尻切れトンボのような状態になってしまい、大変申し訳ない気持ちでありました。
遅ればせながら今回は、残りの3つの資格要件についてのご説明をさせていただきます。
それでは早速見ていきましょう。
そもそも建設業許可の取得にあたり、なぜ誠実性が求められているのでしょうか。
それは建設業が注文生産で完成までに長時間かかり、かつ1件あたりの契約額が高額だからです。
つまり取引を行う上での大前提として、誠実性がないと、安心して請負契約を締結できないため、不誠実な行為をする業者を排除するために誠実性が許可要件となっているのです。
●誰の誠実性が求められるのか
建設業に携わる全ての人に誠実性が求められるわけではありません。あくまでも経営に携わる人に誠実性が求めらるのです。
具体的には、以下のとおりです。
・法人の場合 法人役員(非常勤含む)、実質的経営者、支配人および営業所の代表者
・個人事業主の場合 申請者、支配人および営業所の代表者
●誠実性って?
請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと(建設業法7条第3号)
<不正な行為>
請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為
<不誠実な行為>
工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為
なお、以下の場合は、すぐさま不誠実として認定されます。
①建築士法、宅建取引業法など他の法律で不正、不誠実な行為をして免許等を取り消されてから5年経過していない者
②暴力団関係者
いかがですか?上記を見ると、何となく難しく考えてしまいがちですが、要するに申請者が通常の営業を行っていれば、当然に備えているものなのです。
(ごく普通に営業していれば誠実性は認められます)
あえて法律で誠実性を求めているところに建設業の責任の重さを感じますね。
建設業の許可を受けるためには、役所側に「大規模な工事を請け負っても最後まで完了できるだけの財政的な基盤がある事業者」とみなしてもらう必要があります。そこで建設業許可の取得にあたっては、財産的基礎・金銭的信用を有することを証明する必要があります。
<一般建設業の場合>
財産要件については、以下の2つのいずれかの要件を満たす必要があります。
①直前の決算において、自己資本額(純資産額。資産額から負債額を差し引いた額)が500万円以上あること
具体的には、毎年税務署に提出している貸借対照表のうち、「純資産の部」の金額をいいます。
決算書には、資本金や資本剰余金、利益剰余金、繰越利益剰余金といった様々な項目がありますが、これらの合計額になります。
なお、建設業許可を受けるための財産要件は、許可申請を行う直前の事業年度の決算書で判断されます。
②申請の直近1カ月以内の金融機関の預金残高証明で、500万円以上の資金調達能力を証明できること
金融機関で500万円以上の金額の記載がある預金残高証明書を取得することになります。
なお、常に預金残高が500万円を超えていれば心配ないと思うのですが、例えば月末に売掛金の入金があり500万円を超えるものの、月初に支払いがあり預金残高が500万円を下回ってしまう場合もあると思います。その場合には、500万円以上の金額がある状態で銀行残高証明書を取得しておけば財産要件を満たすことができます。(この場合、許可申請のタイミングは重要ですね)
なお、銀行残高証明書では500万円以上の金額があることを証明できない場合には、融資可能証明書を発行してもらうという方法もあります。
<特定建設業の場合>
特定建設業の許可を取得する場合には、財産要件は上記の一般建設業の場合と比べてさらに厳しくなります。
具体的には、以下のすべてに該当することが必要になります。
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
②流動比率が75%以上であること
③資本金の額が2,000万円以上であること
④自己資本の額が4,000万円以上であること
いかがですか?少し聞きなれない用語もありますので、国土交通省近畿地方整備局の「建設業許可申請の手引き」に用語の解説が掲載されていましたので、参考までに掲載をしておきます。
<用語解説>
○「自己資本」とは
・法人にあっては、貸借対照表における純資産合計の額をいいます。
・個人にあっては、期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に
計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。○「500万円以上の資金を調達する能力」とは
・担保とすべき不動産等を有していること等により、金融機関等から500万円以上の資金について、融資を受けられる能力を
いいます。具体的には、取引金融機関の融資証明書、預金残高証明書等により確認します。○「欠損の額」とは
・法人にあっては、貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合に、その額が資本剰余金、利益準備金及び任意積立金の
合計額を上回る額をいいます。
・個人にあっては、事業主損失が事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性
の引当金及び準備金の額を加えた額を上回る額をいいます。○「流動比率」とは
・流動資産を流動負債で除して得た数値を百分率で表したものをいいます。○「資本金」とは
・法人にあっては、株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額をいいます。
・個人にあっては、期首資本金をいいます。
※都道府県によって、財産要件の取り扱いが若干異なる場合もありますので、必ず申請窓口に確認しましょう。

欠格要件については、誠実性と異なりかなり具体的に定められています。
具体的な内容は、国土交通省近畿地方整備局の「建設業許可申請の手引き」に掲載されていましたので、ご紹介します。
まず、許可申請書や添付書類の中の重要事項で虚偽の内容を記載したり、重要な事実をわざと記載しなかった場合のほかに以下の①から⑬までのいずれにも該当しないことが要件となります。
<欠格要件>
① 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
② 法第29条第1項第5号又は第6号に該当することにより一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
③ 法第29条第1項第5号又は第6号に該当するとして一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から当該処分があった日又は処分しないことの決定があった日までの間に法第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で当該届出の日から5年を経過しない者
④ ③に規定する期間内に法第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出があった場合において、③の通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員等若しくは一定の使用人であった者又は当該届出に係る個人の一定の使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しないもの
⑤ 法第28条第3項又は第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
⑥ 許可を受けようとする建設業について法第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
⑦ 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑧ 法、又は一定の法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑨ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
⑩ 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が①から⑨まで又は⑪(法人でその役員等のうちに①から④まで又は⑥から⑨までのいずれかに該当する者のあるものに係る部分に限る。)のいずれかに該当するもの
⑪ 法人でその役員等又は一定の使用人のうちに、①から④まで又は⑥から⑨までのいずれかに該当する者(②に該当する者についてはその者が法第29条第1項の規定により許可を取り消される以前から、③又は④に該当する者についてはその者が法第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、⑥に該当する者についてはその者が法第29条の4の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該法人の役員等又は一定の使用人であった者を除く。)のあるもの
⑫ 個人で一定の使用人のうちに、①から④まで又は⑥から⑨までのいずれかに該当する者(②に該当する者についてはその者が法第29条第1項の規定により許可を取り消される以前から、③又は④に該当する者についてはその者が法第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、⑥に該当するる者についてはその者が法第29条の4の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該個人の一定の使用人であった者を除く。)のあるもの
⑬ 暴力団員等がその事業活動を支配する者
<補足説明>
①の破産者で復権を得ないものついて、例えばブラックリストに載ってしまっている場合に心配される方がいますが、全く問題ありません。また自己破産してしまった場合でも「免責」になっていれば問題ありません。通常はすぐに免責になると思います。
⑦の禁固、懲役の刑に処せられ5年経過していないケースについて、仮釈放から5年ではダメです。また、執行猶予中のダメなのですが、執行猶予期間が終われば問題はありません。
⑧の罰金以上の刑に処せられたケースについて、建設業法はもちろんのこと、一定の法、具体的には刑法のうちでも傷害、暴行、脅迫、背任、現場助勢、凶器準備集合及び結集などの違反をすると罰金刑以上が確定したときに欠格要件に該当して建設業許可を取得できなくなります。
いかがですか?前回のブログに続いて、ようやく5つの資格要件についてご説明をすることができました。
前回のブログの冒頭で触れましたが、建設業許可を取得するためには、5つの資格要件について、一つ一つ証明をする作業なんだということがおわかりいただけたと思います。
この証明の作業は、確かに大変ですが、一つ一つ丁寧に必要な書類を揃えて、書類を作成して、建設業許可を取得しましょう。
では、これで建設業許可の5つの資格要件についての説明を終わります。
これからも引き続き皆さんのお役に立てる情報を継続して発信していくつもりです。
何卒よろしくお願いいたします。
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