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今回は、建設業の皆さんがさらに経営を安定、成長させるための一つの方法として「経営事項審査」をご紹介します。
経営事項審査は、国や地方公共団体が発注する公共工事を直接請け負う場合に必ず受けておかなければならない審査です。
そもそも公共工事を受注すること自体、現在の経営規模では難しいのではないかと最初から諦めておられる経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には、かなり小規模な会社が公共工事を受注しているケースはたくさんあるのです。まさに「為せば成る」です。
1件の公共工事の受注(元請受注)は、さらなる公共工事の受注につながり、売上のアップや財務体質の強化につながります。
また、この「経営事項審査」は、各建設業者さんの通信簿のようなもので、客観的にその建設業者さんを評価したものになりますので、元請業者が下請業者を選定する場合や継続的な取引がある下請業者の経営状態をチェックする場合にも利用されるだけでなく、金融機関から融資を受ける際に参考にされる場合もあり、そういった意味からもますます重要性が高まっています。
そこで、「経営事項審査」を今後検討したいという方に向けて、「経営事項審査」の概要や審査の流れ等についてご説明をしたいと思います。
では、早速見ていきましょう。
「経営事項審査」は、公共工事を発注者から直接請け負う場合に建設業者が必ず受けておかなければならない審査です。
公共工事の各発注者は、競争入札に参加する建設業者の資格審査を行うことになっており、「客観的事項」と「主観的事項」の審査結果を点数化し、順位付け、格付けを行っています。
この「客観的事項」の審査が「経営事項審査」と呼ばれています。
※ちなみに「主観的事項」は、ISO9001の認証取得、ISO14001の認証取得、障害者の雇用など(各発注者によって異なる)
客観的事項は、「経営状況」および「経営規模等」(経営規模、技術力、その他)について数値化・評価します。
「経営状況」および「経営規模」の概要は、以下のとおりです。
・経営状況 → 収益性や財務健全指標など
・経営規模 →完成工事高(業種別)や自己資本額
・技術力 → 技術職員数(業種別)や元請け工事高(業種別)
・その他(社会性など) → 労働福祉の状況(社会保険加入)、営業継続の状況、防災活動への貢献、法令順守の状況、建設機械の保有状況など
「経営状況」の分析については、「経営規模等」の評価を受ける前にあらかじめ国土交通大臣が登録した経営状況分析機関にて行います。
<経営状況分析機関>
・(一財)建設業情報管理センター(本部・西日本支部)
・㈱マネージメント・データ・リサーチ
・ワイズ公共データシステム㈱
・㈱九州経営情報分析センター ほか
「経営規模等」の評価については、以下のとおり許可行政庁に申請します。
<許可行政庁>
・大臣許可 → 北海道開発局長、地方整備局長、沖縄総合事務局長
・知事許可 → 都道府県知事
経営事項審査の申請等の手順は、以下のとおり
1.建設業者が上記でご紹介した登録経営状況分析機関に対して経営状況分析申請を行い、「経営状況分析結果通知書」の交付を受ける
2. 建設業者が国土交通大臣(北海道開発局長、地方整備局長、沖縄総合事務局長)または都道府県知事の「審査行政庁」に対して経営規模等評価申請を行い、「経営規模等評価結果通知書」の交付を受ける
3. 建設業者が審査行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)に対して総合評定値の請求を行い、「総合評定値通知書」の交付を受ける
(総合評定値を請求する場合は、許可行政庁に対して、「経営状況分析結果通知書」を提出しなければならない)
※上記の経営規模等評価申請と同時に行われる。
※総合評定値の請求については、任意。
4. 審査行政庁は、公共工事の発注者から請求があった場合には、建設業者の総合評定値(経営状況分析に関する数値や経営規模等評価に関する数値の請求があった場合は、これらのデータを含む)を通知する
※上記において建設業者が総合評定値の請求を行っていない場合は、経営規模等評価に関する数値のみが通知される。但しほぼ全ての発注者が「入札参加資格審査申請」において総合評定値を求めてくるため、ほぼ全ての申請者が総合評定値の請求まで行っている。
有効期限はあります。
経営事項審査の有効期限は、該当の審査基準日(決算日)から1年7カ月になります。
ここで注意をしていただきたいのは、結果通知書を交付されてからではなく、あくまでも審査基準日(決算日)から1年7カ月になります。
よって経営事項審査を継続するためには、毎年決算終了後に早めに決算変更届を提出し、経営事項審査の申請を行い、早めに結果を受けておく必要があります。
※経営事項審査においては、工事経歴書は重要な資料になりますので、まずは決算変更届を作成しておく必要があります。
経営事項審査が必要となる工事については、建設業法施行令第27条の13に定められています。
国、地方公共団体、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く。)又はこれらに準ずるものとして国土交通省令で定める法人が発注者で、工事1件の請負金額が500万円以上(建築一式工事の場合は、1,500万円以上)の場合は、経営事項審査を受けていない建設業者は、発注者から直接工事を請け負うことは出来ません。
■上記につき、以下の建設工事は、例外となります
1. 堤防の欠壊、道路の埋没、電気設備の故障その他施設又は工作物の破壊、埋没等で、これを放置するときは、著しい被害を生ずるおそれのあるものによつて必要を生じた応急の建設工事
2. 上記のほか経営事項審査を受けていない建設業者が発注者から直接請け負うことについて緊急の必要その他やむを得ない事情があるものとして国土交通大臣が指定する建設工事
<参考>
①法人税法(昭和四十年法律第三十四号)別表第一に掲げる公共法人とは?
・沖縄振興開発金融公庫、株式会社国際協力銀行、株式会社日本政策金融公庫、港湾局、国立大学法人、社会保険診療報酬支払基金、水害予防組合、水害予防組合連合、大学共同利用機関法人、地方公共団体、地方公共団体金融機構、地方公共団体情報システム機構、地方住宅供給公社、地方道路公社、地方独立行政法人、独立行政法人、土地開発公社、土地改良区、土地改良区連合、土地区画整理組合、日本下水道事業団、日本司法支援センター、日本中央競馬会、日本年金機構、日本放送協会
②これら(上記)に準ずるものとして国土交通省令で定める法人とは?
建設業法施行規則第18条で定められています。たくさんありますので、一部を掲載します。
公益財団法人JKA、国立研究開発法人科学技術振興機構、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、国立研究開発法人理化学研究所、首都高速道路株式会社、消防団員等公務災害補償等共済基金、新関西国際空港株式会社、地方競馬全国協会、中間貯蔵・環境安全事業株式会社、東京地下鉄株式会社、独立行政法人環境再生保全機構、独立行政法人勤労者退職金共済機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人農業者年金基金、中日本高速道路株式会社、成田国際空港株式会社、西日本高速道路株式会社、日本私立学校振興・共済事業団、日本たばこ産業株式会社 ほか

中小事業者については、経営規模等の評価にあるその他(社会性)の審査項目が狙い目になります。
実施できることは、出来だけ実施しましょう。
具体的には、以下の内容になります。
・労働福祉の状況 → 雇用保険、健康保険、厚生年金保険に加入する。
・建退共 → 建設業退職金共済制度、
・退職金関連 → 退職一時金制度若しくは企業年金制度に加入する。
・法定外労務 → 法定外労働災害補償制度に加入する。
・防災協定締結の有無 → 防災協定を締結する。
・法令遵守の状況 → 建設関連法令を遵守する(営業停止、指示処分を受けない)
・建設業の経理状況 → 公認会計士・税理士・建設業経理事務士などの有資格者を採用する。
・建設機械の保有状況 → 建設機械を所有及びリースにて保有する。
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